大規模修繕の際にいちばん重要になるのが、経年によるコンクリートの劣化(鉄筋露出、ひび割れ、欠損、中性化等)や防水材(シーリング材を含む)の劣化・破断等により失われた躯体とその保護機能を回復させることです。
劣化現象(ひび割れ、白華、錆汁、雨垂れ、変褪色等)で劣化した外観を、新しい仕上げ材で元の美しい外観に蘇らせます。
大規模修繕によって、建物の財産としての価値を維持し、更に向上させます。
生活様式の変化により建物や設備の陳腐化した機能を、建物の防犯性や安全性と設備機能の向上の観点から改良して、住み易い建物にします。
科学的な調査と評価方法により、故障の原因を究明することによって、初めて自分のマンションの状況に応じたオリジナルな修繕仕様や修繕工事着手の優先順序を決定することができ効率的かつ経済的な修繕工事が可能となります。
一般に施工工事業やメーカーによる調査診断は無料サービスで行われていますが、科学的で正確な調査診断は投資金額に対して経済効率の高い修繕工事ができるため、結果的に、調査診断に費用がかかっても、割安となります。むろん、過剰な品質性能や低品質工事も発生しません。
科学的調査により、建物の劣化度が明らかになれば、その時点での修繕工事に役立つだけでなく、中・長期修繕計画の作成も容易となり、計画の密度も高まります。
民法717条により建物所有者や仕様車に課せられている損害賠償責任を生ずる建物災害の予防や隠れた瑕疵(欠陥)の早期発見ができます。外壁などのモルタルやタイルの落下により損害が生じたときは、管理組合に損害賠償責任が課せられます。調査診断をすることによって、欠陥の早期発見と事故の予防ができます。
中立的で専門的な調査に基づき得られた資料は、適切な修繕工事仕様や正確な数量内訳書の作成に役立ち、その結果、公平で経済的な入札や業者選定ができます。
建物は一律に傷むものではなく、下の画像の○印の部位のように太陽熱や雨水の影響を受けやすい部位、雨垂れが最後まで残る部位、建物の挙動の影響を受ける部位等条件の厳しい部位、新築時施工のし難い部位から傷みはじめます。
目視観察、触診、簡単な調査機器(テストハンマー、双眼鏡、カメラ等)を用いて、外壁、屋上・ルーフバルコニー防水、バルコニー、開放廊下、外部階段廻り、鉄部等について各種故障の発生箇所・数量を調査します。その結果をもとに、各部位における故障種別の集計を行うと共に、その原因を推定し、補修方法の検討及びその工事費算出のための資料を作成します。
アンケート結果に基づき、室内漏水等不具合の生じている住戸を中心に、お部屋内やバルコニー内の立入調査を行い、目視・触診・打診・写真撮影等を行い、外部目視のみでは確認できない故障の確認や、各部位の納まりの確認を行います。
バルコニー立入調査状況
簡易吊足場調査状況
付着力試験機により既存外装材(タイル・塗装)の付着力を測定し、付着強度、破断状況及び種別等の把握のための調査を行い、この結果を基に修繕工事の際の工法検討をするための資料を作成します。
付着力調査状況
外装材破断状況
小径コア又ははつりを併用し、コンクリートの中性化深さ・鉄筋の被り厚さ・鉄筋の錆等の調査を行い、躯体の中性化防止対策の必要性を判断するための資料を作成します。
鉄筋確認状況
中性化深さ調査
サッシ廻り及び外壁目地のシーリング材の付着状況や目地の形状測定及び既存シーリング材の種別判定、劣化度判定等を行い、打替えの必要な範囲の特定や修繕仕様検討のための資料を作成します。
シーリング材切取状況
シーリング材物性試験
共用部給排水設備の配管、設備機器等について、外観目視調査及び触診を実施し劣化状況等を確認し、記録及び写真撮影を行う。また、配管ルート、管材、機材搬入や付帯工事を把握する。
MB内調査
加圧ポンプ
共用部電気設備について、図面確認、外観目視調査を実施し劣化状況等を確認し、記録及び写真撮影を行う。また、必要に応じ、共聴設備等の専有部に関わる電気設備についても確認を行う。
配電盤調査状況
外灯盤内部点検状況
共用竪管、専有部給水管、専有部排水管及び共用竪管について、内視鏡を用いて、管内の状況を確認します。
内視鏡調査状況
給水管内状況
汚水管内状況
雑排水管内状況
給水管抜管サンプル
排水管肉厚測定
X線測定状況
X線フィルム
大規模修繕工事の大きな目的は、限られた予算の中で、建物を適切に維持保全し、耐久性を高めることです。外装材等は、経年により全体的に劣化し、機能が低下します。建物それぞれ特有の特殊な劣化、故障が生じる部位もあります。
設計業務の際に、各種記録(調査記録、工事記録等)を確認の上、各部位や部材の全体的・部分的な事象・劣化・故障について、修繕方法の検討を行い、次回修繕も見据え、実施する項目、傷みやすい部位でグレードを上げ施工する項目、見送る項目等を決定します。
また、総合的な判断は当然ですが、特殊な劣化・故障の把握を正確に行い、過剰な仕様を避け、半端な仕様を組まないことが、長期的な視点において、費用対効果を含めた建物の維持保全につながると考えます。最終的に、これらの検討及び資金的な面からの施工範囲、仕様を決定し、見積書、仕様書、修繕図面を作成します。
計画における管理組合の合意形成もプロジェクトの重要なポイントとなりますので、合意形成サポートも併せ、尽力していきます。
今後約10〜12年間の耐用年数の延命を図ることを目標に修繕設計を行います。
修繕工事仕様書作成
工事毎に施工工事範囲、使用材料、工事工法の仕様書作成
修繕設計図面作成
部位の詳細納まり、施工範囲、仕様を明記し、納まりの改善が必要な箇所について、提案・検討し、詳細図を作成
修繕工事概算見積書作成
各部位別の数量拾い出し、工事項目設定、設計単価・金額を設定、工事の優先度を設定し、工事範囲についての検討
大規模修繕工事は、管理組合(発注者)、施工会社(請負者)、監理者の三者が一体となり、完成に向かうプロジェクトであると考えます。定期的な会議等により、監理者及び施工者からの「報告・連絡・協議」を確立し、現状の把握、要求・要望の検討、是正方法の検討等の協議を行い、よりよい工事の完成を目指すことが不可欠です。
材料搬入検査
マーキング確認
週定例会議
総合定例会議
居住者対応確認
組合検査状況
理事会が、工事業者を選定するためのサポートをさせていただきます。施工会社の選定にあたっては、管理組合の予算にあった施工会社であることが前提となり、優良施工会社、現場体制の整えられる施工会社であることが望ましいです。
優良施工会社とは、健全経営・改修実績・総合技術力・アフター対応力等の整った施工会社を指します。
また、優良な施工会社を選定できても、実際に工事を行う現場の体制が整えられなければ意味がありません。現場体制の主役でもある現場代理人(監督)、技術スタッフ、後方支援部隊等の体制が整備されないことには、せっかく優良施工会社を選定できても、修繕工事には反映されません。
これらの能力が浮かび上がる様、施工会社選定の為の比較表等を中心し、資料を作成させて頂き、この選定の一番のポイントとなるヒアリング(面談)を行います。
施工者ヒアリング状況